スマートフォンサイトへ

第七号・2014.10.16 

                  子ども社会臨床研究会□発行責任者 亀口公一

◆はじめに

 第6回勉強会が、去る9月19日、参加者10名で開催されました。世話人の椎木さんから報告が届きましたので掲載します。
 なお、話題提供者の巽さんが当日のために作成されたパワーポイント資料が事務局にあります。必要な方は事務局までお申し出ください。

◆第6回勉強会のまとめ

 近畿大学理工学部生命科学科の巽純子さんを話題提供者としてお招きして、「出生前スクリーニング検査によるダウン症胎児の人工妊娠中絶は適切か?」というテーマで学習会を持ちました。マスコミ等で取り上げられている「新型出生前検査」(NIPT)は、昨年4月よりスタートして、検査を受診して陽性が確定した人の97%が中絶を選択したという現状について解説していただいた。

 NIPTは、妊婦から血液を採取して「非侵襲的に検査」として行われ、妊娠早期(10週)から推定可能であり、精度も高いと報道され羊水検査(確定検査)をせずに中絶を選択する可能性がある。NIPTが、なぜダウン症候群をターゲットとしているかについては、検査が簡単で正確なこと、スクリーニングによる検出効率が良いこと、ダウン症候群の人を育てていく過程において親の負担が大きいことと社会的に福祉費用を軽減できることが主な理由である。英国では、NIPTのスクリーニング検査が「女性の権利」として全英で提供されるべき検査として普及しているそうだ。

 次に、NIPTの当事者であるダウン症児の親は、告知された時どのような気持ちを持ったのかについて、アンケート調査1996年と2006年の結果では、「ショック」が最も多かったという。2013年調査でも、「不安、ショック、悲しかった」というネガティブな意見が100%だったが、子育てをしてくうちにポジティブな意見に変わっていくという。


 NIPT先進国である英国でも、2003年にはダウン症協会が「ダウン症は中絶の理由とならない」という見解を発表し、疑問が出され「倫理的検討の必要性」が提起されているという。

 巽純子さんは、ご自身がダウン症の娘さんー祐希さんを同世代のお友だちの中で育ててこられた体験をお話された後、「出生前診断の運用のルール作り」とカウンセリング体制の整備、命の選別ではなく胎児の生きるための対応策をプランニングすること、出生前診断により胎児の生存権が積極的に促進され、出生後の総合的サポート体制が整備されること、と出生前診断の問題の課題を3点強調された。


 私は「市民のためのがん治療の会」のHPで読んだ『脱原発と優生思想』*という小論の中で、著者の安積遊歩さんが「優生思想から互いに協力し対等であろうとする社会への転換は、差別を問い、一人一人の尊厳を再認識しなければならない。体の作りが人とどんなに違っていようと、コッミュ二ケーションのあり方が非常に個性的であろうと、あるいは全く言葉らしい言葉を持たなかったとしても人は、その存在のままに貴ばれるのであると、脱原発社会は志向するのである。」と書いていたことを思い出した。(文責:椎木章)
   ※『脱原発と優生思想』(http://www.com-info.org/ima/ima_20140723_asaka.html)


◆第7回勉強会のお知らせ


 次回の第7回勉強会の日時と内容は以下です。ぜひご参加ください。

日時2014年11月21日(金)午後6時半〜9時
会場東大阪市市民会館5階1号室(近鉄奈良線河内永和駅東へ徒歩1分)
電話06-6722-9001
話題提供者葛井展子さん(「桃花塾」児童発達支援事業ピーチサークル代表)
演題「発達を支える」〜児童発達支援事業ピーチサークルより〜

 ~事務局から~

 今年度から始まった隔月の勉強会は、毎回、特別な支援を必要とする子どもをめぐって、親御さんや専門家から深くて大切な課題(task)を提起していただいています。しかし、誰もが参加できる勉強会のお知らせが広く情宣できないまま、毎回、参加者が限られてしまっています。 そこで、11月から「子りん研」事務局のサイトをNPO法人アジール舎のホームページwww.asile-sya.com内に開設することにしました。
 今後は、この「つうしん」もサイトにアップしますので、周囲の方々にも是非ご案内ください。(亀ん)

戻る  ◇ 第二号 ◇ 第三号  ◇ 第四号 ◇ 第五号 ◇ 第六号 ◇ 第七号

    ◇
第八号  ◇ 第九号 第十号